2011年3月11日金曜日

気持ちのいいOn2

On1ではカウント4と8の時、足がスタート位置に戻った時点で一旦動きを止め、5と1で再び始動する。

一方のOn2ではカウント4と8を数えている間も、足は5と1の位置へと移動する真っ最中である。


On1は4カウントごとに仕切り直しの間が持てるのに対し、On2では絶え間なく動き続けなければならない。

ペア同士が組んでステップを踏むのにどちらがより同期させやすいかは明白である。

例えるなら、On1は向かい合って座るベンチ型ブランコに乗った感じ、On2は別々にこぐ二つのブランコに乗ったようなものか。


リード&フォローは両者のステップを基に行われる。

ペアの二人が4カウントごとに「ヨーイ、ドン!」でスタートし合えるOn1はリード&フォローにおいて、厳格さはさほど要求されない。


一方、On2の場合は両者が動き続けながらリード&フォローをこなすというハンディがあるのだ。

気持ちよく踊るには「理論を踏まえたリード」と「相手への思いやり」が不可欠となる。

しかしながらハンディがある分、この二つをしっかり踏まえたOn2サルサは、二人の一体感ばかりでなく、次へ次へ…と続いて行く持続感がOn1には無い気持ちよさを生む。

私が考える、気持ちのいいOn2サルサとは、複雑なワザを次から次へとつなげたり、スタイリングを目一杯挟む派手なサルサではない。

相手を気持ちよく踊らせる為に、正しい方法論に基づいたリード&フォローで成り立ったサルサのことである。

世の中のOn2ダンサーの大半がOn1からの転向だと思われるが、そのリーダーのまた大半がOn1時代のリード感覚のまま女性に対している。

ところが、理論的に間違ったリードでも女性は踊れないことはない為、残念ながら世間では「On1タイミングの“ナンチャッテOn2”」がまかり通ってしまっているのだ。

そう考えると、私の言う「気持ちのいいOn2」とは、実は当たりまえのことを当たりまえにできる「基本に忠実なサルサ」に過ぎなかったのである。

2011年3月8日火曜日

リード&フォロー(4)リズム編

女性の動きを司ることだけが男性のリードではない。

リズムの感じ取り方は人それぞれである。そして、それによる体の動き出すタイミングもまた人によって違いがある。
この二つに顕著な違いがあるペアが踊った場合、男性が主導権を持つのが一般的であるのだが…。

リズムにおける主導権に留まらず、リード全般において女性に安心感を与え、追従するのを心から納得させる為に、男性はまず“説得力のあるリズム感”を見せ付ける必要がある。

これはただ単に正確なリズムを刻めばいいというのではない。
男性自身が踏むステップによって作り出したリズムを、握った手を通して女性に伝導させるのだ。
これはいくら正しいリズムで動いていても、足先だけのタップを繰り返していては不可能である。
両足交互に重心を移し、上半身をも使ってステップすると、足からくるビートにボディのグラインドが加わり、心地よいグルーブとなって相手に伝わる。

このグルーブ感は、なにも男性→女性の一方通行ではない。
女性の側でも作られたグルーブが男性に還元されると、単なるシンクロ感を超えた“超”快感が二人にやってくる。
この快感の中では、もはや小難しいワザは無用となる。
ベーシックに簡単なワザを挟むだけで、極上のごちそうになり得るのだ。

踊った相手にとって、いつまでも記憶に残る人になりたかったら、難しいワザを覚えるよりベーシックを磨いた方がはるかに近道なのである。

リード&フォロー(3)男性編

1.スキーで曲がる時は、抜重した後に内側のエッジを立てカーブの外側に向け加重する。
2.自動車で曲がる時は、予め速度を落とした後にハンドルを切り、曲がり抜ける際に再びアクセルを踏み込む。

これらの例から、走行するスキーや車をコントロールするには、スキー板や車輪が雪面や路面をしっかりグリップしていることが大前提であることが解る。

同様にダンスでも足裏がフロアをしっかりグリップしていないと、安定した動きや豊かな表現力を得ることはできない。

このグリップを生むのが“意図的に床面に掛ける荷重”、つまり「加重移動によるステップ」なのである。

特に男性の場合、自分自身だけでなく女性の動きまでコントロールしなければならないので、このグリップ力は女性以上のものが要求される。
手に頼ったリードをする男性のリードが読み難かったり、ステップがばたついたりするのは加重移動が出来てないからである。

女性を振り回した挙句に自分までドタバタする男性の姿は、ギアをニュートラルにしたままS字カーブを曲がる自動車に似ている。

女性をリードする際、無意識のうちに足の動きが止まったり、自分が作ったテンションに負けて腰が引けてしまったりする男性をよく見るが、これも良質なステップが出来てない証拠。
まず例外なく手に頼ったリーダーであることが多い。

リードは腕力で引っ張ったり押したり回したりしてはいけない。

手はあくまで添え物。
安定した足腰の上に載った“ボディ”でリードする、と言っても過言ではない。

リード&フォロー(2)女性編

全くの初心者も多く参加する、あるパーティでのこと。

ためらいがちな女性を誘い出し、ベーシックを教える一人の男性がいた。
私の目の前で行われている、その光景を見るとは無しに眺めていると、見本を見せる男性のステップは全く加重移動がなされていなかった。

ダンス用語で、体重を載せて足を動かすことを「ステップ」と言い、体重を載せずに足先だけをちょんと出すのを「タップ」と言う。

ジャズダンスでは最も初期に習う、この違い。
社交ダンスやアルゼンチンタンゴなどのペアダンスでも体重を載せるか載せないかの違いは、リード&フォローの根幹に関わる事柄なので明確に教わる。
しかし残念なことに(と言うより、信じられないことに)、サルサではこの違いを踏まえた上でベーシックステップを教えるレッスンに出会ったことは滅多に無い。

重心を真ん中に置いたままで足だけを前後左右に動かして踊ると、確かに楽である。
一人で踊る類のダンスなら好きに踊れば結構なのだが、ペアダンスでは相手を気遣うことなく自分勝手なステップをするのはご法度である。

ほとんどの人は、相手が予測不可能な無秩序なステップさえしなければいいと考えるかもしれないが、この加重があるか無いかの違いはリード&フォローのしやすさだけに留まらず、組んだ時の楽しさや気持ち良さにも影響する大問題なのである。

まず、女性に関して車に喩えて説明しよう。

止まった車(女性)に乗った人(男性)がハンドルをいくら回しても、車の向きは変わらない。

車を思った通りに操るには、車が動いていることが大前提なのである。
この動いている状態が、体重を交互に載せ換えてステップすることなのだ。

反対に、体重を中心に置いたまま足先だけを動かすのは、ギアをニュートラルにしたままのアイドリング状態と言える。
車の向きが変わらないばかりか、タイヤを左右に振るだけで車体は全く移動していない。
車体(上半身)が移動しないと良質なベーシックにはならないのだ。

ベーシックを踏む女性の中には上半身を残したままお尻を横振りする人がよくいる。
これこそ、タイヤだけを振っている状態。

骨盤を横にずらすと、掛けるべき荷重が逃げてしまってステップ足の重みが減ってしまうのだ。

振るべき身体パーツはお尻ではなく、リブ(上半身)である。

リブが“横8の字”を描いてこそ滑らかな加重移動が可能になる。
骨盤は横に振るのではなく、縦方向にローリングさせないと加重ができないだけでなく、背骨(体軸)も横ぶれを起こしたり、傾いたりする。

このようにお尻の動きは単なる飾りではなく、リード&フォローに欠かせない大切なステップ要素なのである。

リード&フォロー(1)「自動車と自転車」

女性をぶんぶん振り回す男性。

こういう人は、リードとは女性を意のままに動かす為に働きかける「直接的な力である」と考えているのだろう。
勢いが勢いを生み、自分でもコントロールできない程になると、周囲のペアにぶつかるだけでなく、女性の動きをさえぎったり、肩や腕の関節の向きに反する力を加えたりする。

男性のリードには様々な要素が含まれるのだが、主として

「女性の左右交互の足にかかる荷重の抜き入れ時に付加する必要最低限の“強さ”と“方向性”を持った力学的エネルギー」

と言い換えることができる。

もっと解りやすく自動車とドライバーに喩えるなら、たとえドライバー(男性)の意とは言え、それに沿って動くエネルギーの源はあくまで自動車(女性)自身のエンジンなのだ。

さらに自動車に当てはめると、

「力の方向性」とはハンドルであり、それを促して確かな動きの変化にまで高めるパワーステアリング程度の役目が「力の強さ」と言えるかもしれない。

自転車の様に、

“駆動力”も“操舵力”も乗る人(男性)自身が担うと勘違いする男性がいかに多いか。

本来はレッスンでこれを真っ先に教わるべきだと思うのだが…

2011年3月7日月曜日

サルサを始めた頃の勘違い

サルサを始めたばかり、2005年初頭の話。
計4回のサルサ体験後に下のような文章をブログに書いたことがある。

私は、「リード」とは、女性の手を引っ張って「こっちへ行きましょう!」と、“連れていく行為”だと思っていました。
ところが、実際は違うんですねぇ。。
本当のリードとは…。

パートナーと共に、門扉の前に立ったとしましょう。
まず、自分で門扉、続いて玄関扉を開け、スリッパを用意し、廊下を彼女に先立って歩き、ふすまを開け、障子を開けて、「ささ、どうぞ、こちらへお座り下 さい」と座布団を勧める、旅館の仲居さんみたいに、相手に一切触れること無く、彼女が“落ち着ける場所へ導いていく行為”なんです。
右にターンするのか、左にターンか、あるいはお互いの位置を入れ替わるのか、一度離した手を再びつなぎ合わせるか、しないのか。 全ては、“前もって男性が敷いておいた赤いカーペットの上”を、女性が歩いていけば、「自然にそこへ着いてしまう」ようになっていなければならないのです。

ですから、ジャストのカウントで自分自身が気持ち良く踊っているだけでは、女性は何をしたらいいのか皆目分かりません。
目的の時点の4カウント以上前には、次のワザを思い描いていなければならないし、自分自身の動きを分かってもらう為には、半カウント前には、その予備動作に入っていなければならない。

こんな、「“仕込み”に精を出すものの“肝心の料理は味わえない”料理人」のような仕事が、「サルサ」を踊る男に課せられた宿命なのであります。

当時は知らない方からのコメントやトラックバック依頼などもいくつか寄せられたのだが…。

たしかに前半分は喩えとして間違ってはいないだろう。
しかし今考えると、後半は我ながら勘違いも甚だしい。

当時受けていたレッスンの印象から、「女性に前もって知らせる」ことがリーダーの重要な役目であると、私は思い込んでいた。
しかし、On2に転向してからの経験と私なりの理論探求の結果、リード&フォローを成立させる上で最も重要なのは「リードを前もって教える」ことなんかではなく、男女双方が「加重の利いたステップをする」ことだと気付いたのだ。

その理由は次回以降の記事で詳しく述べることにする。

2011年3月6日日曜日

振り付けじゃない

昔、東京で参加した、あるレッスンの最中の出来事。

私が女性を右にターンさせようとしたら、その直前に彼女は左に回り始めた。

「ううん、ここは右回り。」と言いながら両手を使って動きをさえぎり、右にリードすると、その女性は「すみません。どっちに回るか、なかなか覚えられなくて…。」と謝った。
私は「どっちに回るかは女性が覚えることじゃないよ。女性は男性がリードする通りに動けばいいんだから。」と答えた。

この女性の問題点は2つある。

まず一つは、サルサダンスのレッスンに対する意識。
ルーティンを振り付けだと思って覚えようとしていることである。
ルーティンの流れを覚えるのは、リードする男性の役目である。対する女性はそのリードの受け方を覚えるのが仕事。もし女性が流れを覚えて動く意識しかなかったら、そのワザをフリーダンスの中で使われても、対応できない。

二つめが、男性がリードする前に動いてしまったこと。
一つめの問題点と関係しているのだが、リードに反応して動くべきところを自分の「見込み」や「思い込み」で動いてしまっては男性のリードを邪魔をするばかりか、二人の意気を損ないダンス全体に悪影響を及ぼしてしまう。

とにかく女性は心をまっさらにして、男性のリード通りに動く。
これが大切。
そして男性が何らかのリードをするまでは、基本ステップを続けるか、その場で足踏み。

言葉にするとすごく簡単なんだけど、これがなかなか出来ないんだよねぇ。。。